── 調査開始40日後 ──


  written by wanko  












内ポケットの携帯がブルブルと震え、真澄様からの着信を知らせた。

『はい、聖にございます』

『俺だ。例の会場の件だが、その後、良い場所は見つかったのか?』

『いえ、それがなかなか思うような会場がございませんで…』

『そうか、実はちょうど良いキャパのサロンを見つけたので、昨日、ビルごと買い取った』

『は!(何も買い取らなくてもよいと思うのですが…)』

『11月3日には、既に雪村みちるワンマンリサイタルが予約されていたのだが、彼女には、別の場所を用意した』

『さすがは真澄様。(裏工作の為には、買い取った方が何かと都合が良いということですね)』

『メールに情報を入れておく。彼女達にそれとなく、この会場を示唆してやってくれたまえ』

『かしこまりました。結果については、近日中にご報告致します』

『あぁ、頼んだぞ』


早速、送られてきたメールより、詳細を確認する。なるほど、なかなかに雰囲気のある会場のようだ。
さて、本日も彼女達は例の場所で会合を開くらしいのだが、どのように、この情報を 掴ませれば良いであろうか。

・・・・・・・・・・・

えーい、面倒だ。あまり凝ったことをしなくても、彼女なら疑うことはしないだろう。私は、近日行われるコンサートの広報を装い、真澄様が買い取った会場に関するチラシを作成した。その後、変装七変化収納トランクより、今どき(実は昭和風味)の若者風な装いに着替える。

「完璧ですね」

鏡を見ながら、私は呟いた。
二コリと微笑めば、「いいね、白い歯、さわやかだよ」と言われること間違いなしの好青年っぷり。歳は取っても、桜小路になぞ、負ける筈はないのだ、フンッ!(鼻息、なぜかライバル心剥き出し)

そして、渋谷駅前のスクランブル交差点にて、チラシ配りのバイトを装い、彼女の到着を待った。

(はっ!あの首輪、間違いない。○anko様だ)

現れたメンバーに、私はサッと近づき、すかさずチラシを差し出す。

「どうぞ〜」

ティッシュがないことを一瞬で見て取ると、無視して通り過ぎようとする彼女に、なおも食い下がる。

「ピアノコンサートのお誘いです。素敵な会場でピアノの音色に包まれてみませんか?」

この言葉に、ピクリと反応した彼女に、有無を言わせずチラシを握らせる。と同時に、鞄に盗聴器を仕込むことも忘れない。

「お待ちしてますので、是非どうぞ〜」

とどめの笑顔を向けながら、もう一度言った。


さて、どうでしょうかね。私はイヤホンから聞こえてくる声に耳を傾ける。

「ねえねえねえねえ、今、そこで、ピアノコンサートのチラシを貰ったんだけど、この会場すごく良さそうだよ!」

「え?マジ?」

「うん、写真が載ってるんだけど、これ、見て!すっごい素敵じゃない?」

「本当だ!ちょっとセレブな感じがするね」

「いいんじゃない、いいんじゃない!」

「電話番号載ってるから、連絡して見学させて貰おうよ」

「うん、そうしよう!」


望んでいた通りの展開である。その後、イヤホンから聞こえてきた音声でも、首尾は上々。 会場を見学した彼女達は、えらく気に入り、その場で会場使用の申し込みを行っていた。会場のオーナーに11月3日の空き状況を確認した際、つい最近キャンセルが出て、その日は1日空いていると聞き、「すごい、運命じゃん」等といたく感激していた。
貴女達には、運命の女神さえも、その眼差しひとつで落とすという真澄様がついておいでなのです。何も恐れることはありません!さぁ、そのまま、思う存分、おやりなさいませ。


† 本日の報告メール †

「コンサート会場については、無事決定。今のところ、大きな障壁はなし。引き続き、調査続行致します。5月XX日 聖





08.10.2005



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