epilogue |
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満月の柔らかな光が夜を包む。 真澄のマンションの部屋は限りなく月に近い。 マヤは導かれるようにルーフバルコニーに出る。 「マヤ…」 月を背に立つマヤは、真澄の声で光を斜めに受けながら振り向く。 真澄は、その姿に一瞬言葉を失い、この世の誰よりも綺麗だと思う。 マヤの隣に行き、その顎に長い指を添えて上を向けると、柔らかなキスをする。 「月の精にキスを…」 「え…?」 カクテルのCMを思い出し、マヤは恥ずかしげに俯く。 あれは、絶望の中で、真澄への叶わぬ想いを一心に込めて演じたもので、放送当時は、彼女は恋していると随分と噂になった。今思い出すと、恥ずかしさの余りに隠れたくなってしまう。 俯いた先に、真澄の左手が見えた。 しなやかで骨のラインまできれいな、手。 そっと手を取り、その長い指に口づける。 今はもう、薬指の指輪は、ない。 「今日…。指輪を外してきた。終わったから」 「うん」 「…知ってた?」 「うん…。今日、紫織さんが楽屋にきたの」 「そうか」 「うん」 真澄の左手を、ぎゅっと握る。 本当は、この日が来たら、もっとたくさん喜んで、ありがとうと言って、はしゃぎたい気分になるのかなと思っていた。何か、言葉にして言いたいことが、たくさんあるような気がするけれど、でも、うまく言葉が出てこない。 真澄を見上げる。 月明かりを浴びて、恐ろしいほどに美しい端正な顔。 マヤを見下ろす眼差しは、穏やかで深い。 言葉は無い。 今は、ただ、黙ってーーー 「…キス…したい…」 真澄のシャツを握って見上げるマヤの瞳には、 真澄だけが映っている。 これ以上の愛しい存在は無い、と真澄は思う。 抱き締めて、髪を梳いて、頬を寄せて、キスをする。 始めは優しく、その柔らかさを楽しむように。 しだいに深く、その奥にまで愛を込めて。 マヤはキスが好きだ。 愛の言葉を囁くよりも、何よりも、マヤは口づけで愛を語る。 最初のキスは戸惑いとともに。 いつしか、マヤのキスは込められた想いをそのまま届けるほどに。 その小さな口が喘ぐように、真澄を求めてくる。 角度を変えながら、何度も。何度も。 決してキスに不慣れなわけではない真澄でさえも、 マヤのキスには太刀打ち出来ない。 つま先から躰の芯が、じんわりと甘く妖しく痺れていく。 永遠を思わせるキス。 抱き締めていた真澄の指が、やがてマヤを探し求めて ゆっくりと動き始める。 吐息を漏らしながら。 満ちていく。 月は、また時と共に欠けていく。 けれど、もう 二人の間で欠けるものは、何一つない。 ふいに、真澄が唇を離す。 不思議そうに、少し不満そうにマヤが真澄に視線を投げる。 真澄は、視線を優しく受け止めると、唇の端で小さく笑う。 「…続きは、ベッドの上で…」 マヤは一瞬固まって、真っ赤になって、それから小さく頷くと、 真澄の腕にしがみつく。 そのまま二人の影はひとつになって、 満ちた月明かりが、穏やかに差し込む部屋の中へ 消えていく。 02.04.2005 だぁぁああッッ!!終わったよ、終わったがな〜〜〜ッ!! ゼイゼイハアハア…… またまた無謀にも脱稿前に連載開始してしまったもので、激しく息切れしながら、やっと最後まで書きましたーー。 月齢と二人の心情を重ね合わせる。ということだけを決めて始めたお話でしたが、なんとかラストまでいけて、よかったです。 epilogueは、二人のためのサービスカットのような(w 10話もひっぱってきて、ろくにいちゃいちゃせずに終わるのもどうかと思ったもので。この二人には、少しいちゃいちゃしてほしかったもので。蛇足のようで、どうもすいません。 そして、やっぱり紫織は簡単クッキングでしたな(苦笑)。 紫織をじゃんじゃん絡ませると、簡単に終わらないんだもん…(^^; 連載中、掲示板や拍手やランキングで励ましてくださった皆様には、心より感謝を! そして、最後までお付き合いくださった方には、咲蘭の愛とchuを♪ (↑だから、いらないってな) |
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