片割れだから

  written by 咲蘭  .





















速水さんって、手が大きい。

チビちゃんは、手も小さい。

ほら、関節ひとつ以上は軽く違いますね。

そうだな。

それに、速水さんは、背も高いし、背中も広い。

チビちゃんは、チビだし、華奢だ。

もうっ、チビチビ言わないでくださいよ。

ははは、すまない。おれは嘘のつけない性格だからな。

…よく言いますよ。ずーーっと、とんでもない秘密持ってたくせに。

大人だから、ポーカーフェイスも得意なんだ。きみと違って。

むーーーっ…。速水さんは、すぐ人をからかう。

くっくっく…。きみは、すぐ怒る。

怒ってません。呆れてるんです。

はいはい。

でも不思議ですねー。

不思議?

こんなにいっぱい違うのに。あたしと、速水さんは何もかも違うのに。

違うのに?

なんというか…。なんで、こんなにも、ぴったりなんでしょうね。

ぴったり?なにが?

…なんですか?速水さん、その意味深な笑いは…?

いや、べつに。

あっ!!!!!…そっそういう意味じゃないですよっ!!

くっくっくっく…。べつに何も言ってないだろう?

だから、そうじゃなくって、そういうことじゃなくってですね!

知ってるよ。気持ちも、なにもかも、だろう?

そっ、そうですよ、そういうことです!

答えは簡単だ。

え?

片割れ、だからだよ。きみとおれが。

片割れ…。

そう、ふたりだから、やっとひとつになれる。

ふたりだから、ひとつ…。

つまり、おれにとって、きみはたったひとりの相手なわけだ。

…なんか、それ、すごく嬉しい。

というわけだから、結婚してみるのもいいんじゃないかと思うのだが。

えっ!?

絶句するほど、意外性のある話だったか?

あ…いえ、いや、あの…速水さん…それ本気?

プロポーズを冗談で言えるほど、おれは大人じゃないぞ。

ぷろぽ…ず。

一世一代のプロポーズだから、よく噛み締めて返事してくれていいぞ。

…自信過剰ー。速水さん、あたしが断らないと思ってる。

そんなことないぞ。チビちゃんは昔から予想外のことばかりだからな。

予想外…。

予め言っておくが、きみが家事能力が無いことは承知してるぞ。

うっ…。

それから、台本読みながらトリップしてしまうことも良く知ってる。

えっ…。

社長夫人なんて肩書きをうまく操れるとも思っていない。

むっ…。

ただ、おれの片割れであるきみと、死ぬまで一緒にいたいと思ってるだけだ。

…速水さん。

そういう意味での、プロポーズだ。

…そんなの…。

うん?

…断るわけ…ないじゃない。

…ああ、たぶんそう言ってくれると思ってた。

えっ!? もーっ、やっぱり自信たっぷりだった!

結婚しよう、マヤ。

あたし、速水さんを幸せにできるかな?

きみ以外が幸せにできるわけがない。

おれは、マヤを幸せにできるか?

速水さん以外は考えられない。

これからは、もっと、ずっと幸せになれる。ふたり一緒なら。

…そうですよね。

もちろん。








Fin




11.10.2006





 あとがき .


ベタなプロポーズを、ピロートークで。
いつかは、きっちりハッピーエンドで!の願いを込めて。






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