■■  お題 9. ほんの少しの。  ■■


なんでもいい。
せっかくのきみの誕生日だ。
欲しいものを言ってみたらいい。
大抵のものなら、叶えられると思うが…。


べつに欲しいものなんて無いです。


即答か。
まったく、欲のない女優だな、きみは。
それじゃ、誕生祝いのしようがないじゃないか。


どうしてお祝いしてくれるんですか…?


祝うのに理由が必要か?
ならば、きみの社長だからだ。


本当に欲しいものっていうのは
自分でがんばって手に入れるか
もう、どうしようもなくて、どうにもならなくて、諦めるか
いつだって、ふたつにひとつなんです。


さすがに、紅天女を手中に収めただけはある。
他人には頼らないというわけか。


紅天女女優へのお気遣いありがとうございます。
だから、お祝いのお気持ちだけいただいておきます。
じゃ、もう帰りますね。


待て。
せっかくだから聞かせてくれ。
きみが、どうしようもなくて諦めたものとはなんだ?


どうしてそんなことが聞きたいんですか?


…おれが叶えてやりたいからだ。


そんな思わせぶりなことを言って。
好きになっちゃったらどうするんですか。


…なればいいじゃないか。


あたしが好きになっちゃったら、たいへんですよ。


たとえば、どんなふうに?


すごいヤキモチ焼きだから、いますぐ婚約解消しなくちゃいけないし
いつも顔を見ていたいから、傍から離れないし
いつも声を聞きたいから、たくさん電話しちゃうし
いつも触れていたいから、逢えば手を握っちゃうし
誕生日プレゼントには、キスしてほしいし……




とつぜん、くちびるに触れる柔らかさ。
ほんの少しの。
たぶん、たった1秒だけの、キス。




…誕生日プレゼントだ。


婚約は解消した。
傍から離さない。
電話もする。
手も握る。
もっとたくさんのキスをしたい。

だから、きみがどうしようもなくて諦めたものを教えてくれないか?







fin




05.06.2006(graffiti転載)



あとがき



ささやか〜〜〜〜〜〜〜ながら、マヤちゃんのお誕生日をお祝いして。
いや、まったくささやかだな(汗




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