■■ 2nd annivarsary ■■




「恋の悩み以外だったら聞いてやってもいいぞ」

「なっ…!違います!アルディスの演技のことですよっ」

「ああ、そうだろうな。よもや恋の悩みとは思っちゃいないさ」

妙に納得した言い方か気にくわなくて、マヤは真澄を睨みつける。真澄はどこ吹く風で、書類を捲ってもう一度キーを打った。

「まったく、必ずイヤミで返すんだから…。速水さんも相当のひねくれっ子ですねぇ」

「どういたしまして。それで?」

「……悩みっていうか、どうしてあたしは亜弓さんのように生まれなかったんだろうと思ってるだけです」

「亜弓くんのように?」

「なんていうか気品があって、そこにいるだけで毅然としたオーラがあって。あたしがアルディスの優しさを表現したくて微笑んでも、気軽な親しみやすさとしか見えないし」

真澄は書類を閉じてパソコンの電源を落とすと、マヤの向かいのソファに座る。マヤが知っている真澄はいつもネクタイを締めているような気がするけれど、今はラフな白いシャツに軽く上着を羽織っているだけで、それだけで印象がずいぶん違うように思えて、マヤはわけもなく鼓動が早まり、慌てて両手の指先を弄くって意識を逸らしてみる。


(「恋の少しまえ」 story 4より)







02.05.2006(トップページ・アップ)
05.05.2006(fiction転載)




 あとがき .


02.05.2006で、sceneは2周年を迎えたわけですが、その記念に描いた絵でした。 ちょうどそのころ、「恋の少しまえ」を執筆中で、イメージとしては速水家の書斎で寛いでマヤのおしゃべりに耳を傾けている速水さん、というかんじでした。 

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