■□ 乙女の心安らぐ場所 □■ |
起きたら目覚まし時計の電池が切れていた。 冷蔵庫を開けたら牛乳がコップの半分しか残ってなかった。 気に入っているストラップ付きのサンダルが傷ついているのをみつけた。 出かける直前、携帯電話の充電切れに気が付いた。 走って駅まで急いだら、おじさんにぶつかってイヤな顔をされた。 乗りたい電車の扉が目の前で閉まって行ってしまった。 稽古場に行ったら相手役が病欠だった。 なぜか演出家のセンセにいっぱいダメを出された。 注意されているあたしを共演者がニヤニヤ笑って見ていた。 気を取り直して演ってみたけど、やっぱりダメだった。 演出家のセンセが呆れていた。 天気予報じゃ晴れだったのに、外に出たら雨が降っていた。 急いで傘を買おうとコンビニに入ったら、ヘンな模様のしか残ってなかった。 打ち合わせで事務所に行ったら、あと半年休日無しと言われた。 足が向かう。 こんな時、行きたい場所がある。 エレベーターの▲ボタンを押す。 扉が開く。 乗る。 最上階のボタンを押す。 扉が締まる。 体が一瞬重くなる。 止まる。 扉が開く。 降りる。 「あら、マヤちゃん…?」 ごめんね、水城さん。お仕事中なのに。 ちょっと…、ちょっとだけ…。 重い扉を開く。 顔をあげてこっちを見た。 立ち上がって、歩いてきた。 少し驚いた顔をしてる。そうだよね、約束してないもん。 「どうした、チビちゃん?」 ふらふら進む。 そのまま、その大きな胸の中に入る。 ぴとっ… ここが好き。 あったかい胸も、心臓の音も、匂いも、おっきな手も、長い腕も。 みんな、みんな好き。 ほら、その手で頭をなでてもらったら、もう大丈夫だもの。 なにが、どうしたからなのか、 なんだか説明できないけれど、 なぜか凹んじゃう日があるけれど。 そんなときは、ここにくれば、すぐに治るよ。 ここは、あたしの特効薬だから。 ひとりの頃は、こんな時どうしていたんだっけ。 膝を抱えて耐えてたのかな。 大きな声で稽古して忘れてたかな。 誰かといっぱいしゃべって気分転換してたかな。 だけど 今はここしか考えられない。 それって弱くなったってこと? ううん、ちがう。 だって、ここでいっぱい充電したら、いつも以上に頑張れるもの。 ひとりの頃より、ずっと頑張れるもの。 なんにも聞かないで抱き締めてくれる速水さんが好き。 顔を上げる。 目が合う。 あ、にっこり笑った。 好き。 「その顔になったら、大丈夫だな」 あ、あたしも笑ってる。 「うん、大丈夫。ありがと!お仕事中にごめんね。また稽古、行ってくる」 「ああ、がんばれよ」 速水さんの前でガッツポーズして、 水城さんに照れ笑いして、 あたしは再び午後の稽古場に向かう。 04.02.2004 あとがき 始めてのキリリク…では無く(笑)、今回はキリ番を設定したのは初めてだったので、イロイロと試行錯誤中。 設定した30,000のゲッターさんは残念ながら該当者無しだったのですが、花音ちゃんが30,002というなんとも惜しい番号をゲットしてくれたことで、ニアピン賞を今後とも設置することにしました。 これからは、ニアピン賞の方からもリクエストを頂戴する形にするのですが、とりあえず今回に限りたまたま描きかけのものを花音ちゃんにプレゼントすることにいたしました。 (ゆるせ、乙女よ(>_<)) で、作品ですが。 なんの説明もいらないようなお話で(笑)。なんとなくそんなイラストを描いていて浮かんだ言葉を並べてみました。私の中の忘れていた乙女心を掘り起こすように(^ ^)ゞ こんなんでよろしければ、乙女、もらってくださいませ。 返品お断りでございます♪ |
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